契約書と覚書の違い

取引を行う場合に念書として

契約書とよく似た書類として「覚書」というものがあります。
よく親しい間柄の者同士でお金の貸し借りをする場合に「覚書」という名目で書類にサインをしてもらうことがありますが、他にも何らかの取引を行う場合に念書として「覚書」というタイトルで書面を作成することがあります。
「契約書」も言ってみれば誰と誰が、いつどのような約束をどんな内容で行ったかということを証拠として残すために作成する書面ですから、上記のような目的で作成する場合には「覚書」も「契約書」も違いはないように感じます。
ですが正式にはこれらの書面は全く異なる性質を持つものであるので、きちんとその違いを踏まえた上で作成をするときには注意して使い分けをしていきましょう。

正式な契約書として

まず「覚書」とは正確な定義としてはどのようなものかを説明します。
「覚書(おぼえがき)」という言葉から推測できるように、もともとはそれは何らかの忘れたくないことを記録しておくためのメモとして使用されるための文書でした。
ですがそれが転じて政治やビジネスの場面においては、正式な契約書として決定をしたわけではない口約束的な内容を忘れないように記録しておく非公式の文書という役割としても使用されるようになっていきました。
そのため覚書では内容などについてはある程度記録はしてあるものの、正式な署名や捺印などがないものもあり、それ単体では契約書としての効力は弱いとされていることが多くなっています。
ただし例え覚書であっても、かわされた契約そのものは例え書面にない口約束でも成り立つということが法的に認められているので、書面のタイトルが「契約書」か「覚書」かによって何らかの不利益な取扱が起こるわけではありません。
ただし権利者の関係や責任者がはっきりと記載されていることが多い契約書に比べて覚書はメモの延長のような内容が多いため、結果的に効力が弱まってしまうケースが多くなっているのです。
ただ、そんな覚書もうまく使用すれば契約書の補足として便利に使用していくことができます。
契約書では、双方が責任者本人による署名や捺印、副本の作成や割印といった正式な方法により作成をされます。
しかしそうした手順を踏めば踏むほど、何らかの状況の変化により内容を変更させるための手間が多くかかってしまうことになります。
そこで契約内容の大筋に関してはきちんと契約書で定めておき、その補足となる事項については覚書で作成するということにしておけば、契約の大部分を維持したまま簡単な手続きで契約に関わる事項を柔軟に対応させていくことができます。