契約書と「暴力団排除条項」について

契約の内容

契約書は法的には、それがどのような形式のものであっても、双方の同意によって作られたものならきちんと効力を持って行われるものとして定められています。
ただしどのような契約であってもその効力が100%認められるものではなく、契約の内容が公序良俗に著しく反するものであったり、契約そのものが詐欺や脅迫など本人の意志に反する形で結ばれたものに関しては後の訴えにより無効にすることができるものとしています。

建物の治安が悪化すると

ですがそこで少し問題になるのが、契約の内容そのものは決して公序良俗に違反するものではなく、かつ脅迫や詐欺ではない形で結ばれたものについてです。
正しい手順により結ばれた契約書であっても、その契約の相手方が実は広域暴力団の下部組織の1つであったということがあとからわかったような場合はどうでしょうか。
具体的には、例えばビル内のオフィスを一般企業だと思って契約をしたところ、実際にはその組織が暴力団の一部であり、契約後にはその筋の人が多く出入りすることが予想されるといった場合です。
そうした時にも契約は認められるべきとしてしまうと、実際に組員同士で何らかの事件を起こしてからでなければ立ち退きを要求できないことになってしまいます。
しかし事故が起こってから対策をするのでは遅すぎますし、何よりもそれによって建物の治安が悪化したりイメージが低下してしまうと、それまで入居していた人たちがどんどん退去してしまうことにもなってしまいます。
そこでここ数年の間にに各自治体では暴力団排除を推進することを目的とした条例を制定しています。
2011年からスタートした条例は東京都や大阪府といった都市部の他にも北海道や沖縄など広い地域で実施されるようになっており、現在ではほぼすべての自治体がそれぞれの土地にあった条例により暴力団を排除するための法律を実行しています。
具体的には民間の業社が暴力団へ利益供与することを禁止しており、通常の契約においてものちに暴力団やそれに関連する組織であることがわかったらそれを理由に契約を破棄することもできることを定めています。
もし暴力団と知りつつ利益を提供するようなことがあった場合には公安委員会によりその事業者名をネットに公開することまで盛り込まれているので、これから新規に契約をするときには十分に注意をしていく必要があります。

それに対応するため、建築業の請負などにおいては契約書にあらかじめ「暴力団排除条項」という項目を入れることが行われています。